
「保険の代わりになる」は本当なのか?
「ワンルームマンションは保険の代わりになります。高い保険料を払うより、こっちの方がいいですよ。」
これは、ワンルームマンションを売る時によく使われる営業トークです。
この営業トークは、業界では『保険売り』と呼ばれています。
なぜワンルームマンションが保険の代わりになるか?
ということですが、ワンルームマンションには団体信用生命保険という保険が付いており、万が一死亡してしまった場合や、大きな病気になってしまった場合(契約内容によります)、ローンがなくなるという仕組みになっています。
この仕組みがあるおかげで、もし死亡してしまった場合や大きな病気になった場合はワンルームマンション物件のみが残り、定期的な収入が入るので保険の代わりになる、というのが理由です。
話を聞くともっともだと思いますが、これは本当に信じてもいいのでしょうか?
確かに、保険の効果はあるけど・・・
結論から言うと、ワンルームマンション投資には保険の効果があります。
なので、保険の代わりになるというのはあながち間違っている訳ではありません。
私も実際に、
「ワンルームマンションの物件を保有しているので死亡保障を減らしましょうか」
というアドバイスをすることはあります。
しかし・・・
完全に保険の代わりになるかどうかと言われると、そうではないと考えています。
ワンルームマンション投資は不動産投資
なぜかというと、ワンルームマンション投資は不動産投資であって、根本的には保険ではないからです。
死亡保障が必要なのであれば、保険を使う方が理にかなっています。
保険であれば月々の支払い額が決まっており、保障の額もコントロールすることができます。
しかし、不動産投資の場合は全ての数字をコントロールすることはできません。
不動産投資には、金利の上昇リスク、空室のリスク、修繕のリスクなど、保険にはない様々なリスクがあります。
保険の例えを出されると、なぜだか不動産投資にまつわる様々なリスクに対する意識が薄くなってしまうのですが、決してなくなる訳ではありません。
不測の事態が起こると、想定していた数字が崩れ「あれ、思っていたのと違うな・・・」という状態になってしまいます。
また、ワンルームマンションをずっと保有するのならいいですが、途中で売却をしたら保険効果はなくなります。
当たり前ですが、これに気付かない人は多いです。
保険売りのトークが使われる理由
なぜ、保険売りの営業トークが使われているかというと、
『保険に不満を持っている人が多いから』
です。
投資用ワンルームマンションの営業トークの基本は、その人が不満に思っていることをきっかけにして、その解決策としてワンルームマンションを持ち出す、というものです。
なので、
保険料が高くてどうにかできないか考えている
保険には入ってるけど中身はよくわからない
保険料が上がるのがイヤだ
と考えている人が多い日本では有効な営業トークになるのです。
保険を利用した営業トークの流れ
そういった、保険に不満を持っている人に対して営業マンがどういう風にアプローチをするかというと、
「生命保険入られていませんか?負担が大きくありませんか?」
という話をまずは切り出していきます。
そして、将来どれだけの保険料を払うことになるのかという話をして
「こんなに払うのはもったいなくないですか?」
と聞いたり、死亡保障が60歳までしかない場合が多い、などといった保険のネガティブな話をしていくのです。
そして、
「保険の見直しをしましょう」
という話に持っていきます。
最初はワンルームマンション投資の話を全くせずに、保険の話だけを行うのが特徴です。
保険の話の後でワンルームマンションの話を切り出す
そして、お客さんを「保険の見直しをしたい!」という気持ちにさせた後にやっと出てくるのがワンルームマンション投資の話です。
「今、ワンルームマンション投資を保険の代わりにやる人が多いんですよ」
と切り出すのです。
そして、
「それはこういう仕組みになってまして・・・」
と、このページの冒頭でお伝えしたように団体信用生命保険の説明をしていきます。
そして、
「ワンルームマンションの場合はほとんど自己負担なく保険に入っているようなものになるので、保険をやめれば今払っている保険料が減りますよね?」
と説得をしていくのです。
もしお客さんが納得をしてくれたら、
「では、今まで保険に払っていたお金をワンルームマンションに使いましょう!」
と提案をしていきます。
収支がマイナスなのになぜか納得してしまう
そして、シミュレーションの結果毎月の収支がマイナスでも、
「保険料だと思って払って下さい」
と説得してくる場合がほとんどです。
その結果、投資を目的にしているのに、収支が悪くても納得してしまうという変な状況になってしまうのですが、上手く説得されて購入をしてしまう人は少なくありません。
特に、保険だと思って購入をする場合は投資分析が疎かになりがちで、条件の悪い物件を掴まされてしまう可能性が高まるので注意が必要です。
保険の説明の流れからだとリスクを軽視しがち
また、この話の流れで、保険金が降りた場合は残された家族がその大金をすぐに使ってしまうが、ワンルームマンションだと定期的な収入になるからそっちの方がいい、というような話をする場合もあります。
中には、ファイナンシャルプランナーの資格を取ってここまでの流れを賢いお金の話という形で話す営業マンもいるほどです。
しかし、そういった人は見せかけのファイナンシャルプランナーであり、本質は営業マンです。
保険の説明からの流れで納得をしてしまうと、不動産投資には必ず付いて回るリスクについて軽視しがちになってしまいます。
「保険のようなもの」
という先入観で考えてしまうからです。
こういった保険売りの営業トークには、保険に不安や不満がある人は引っかかってしまいます。
そして、保険に対する不満というのはなかなかなくならないので、この営業トークはこれからも使われていくでしょう。
保険目的でワンルームマンションを購入してはいけない
ワンルームマンション投資を始める理由として、『保険になるから』というだけでやってしまうのは、私は違うと思っています。
ワンルームマンション投資には、リスクがあります。それに、保険と違って多額のローンを組む必要もあります。
ワンルームマンションの保険効果はあくまでおまけであり、メインで考えるべきものではありません。
こういった営業トークを鵜呑みにしてしまうと、変な物件を掴まされてしまい取り返しのつかない状態になってしまうことも考えられます。
ワンルームマンションに保険の効果があることは確かですが、それを目的とした購入にならないように気を付けましょう。